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東日原-ヨコスズ尾根-三ツドッケ-仙元峠-仙元尾根-浦山大日堂

山行 峠越え

12月。関東の低山も紅葉シーズンが終わり、木々の葉が落ちて、すっかり冬の装いとなっている。この静かな時期が俺にとってはベストの山歩きシーズンなのだ。

今回は以前からその特徴的な山容から気になっていた、奥多摩秩父の境界にある三ツドッケ(奥多摩名:天目山)に登ってきた。

いわゆる○×名山などには選ばれていないものの、ガイド本等によれば、近年山頂が違法伐採によって眺望が良くなり、皮肉にも人気が増してきている山なのだそうである。

中腹には避難小屋もあり、山頂の周囲はシロヤシオアカヤシオが群生していて、特に春の花期には賑わいを見せるらしい。

ならばこの時期だろう。おれは花より静けさを求めたい。

しかし12月10日の払暁は不気味な朝焼けであった。翌日は大雨予報が出ている。せめて今日は保ってくれよと祈るような気持ちで出発する。

青梅線奥多摩駅8時02分着。8時10分発の鍾乳洞行きバスに乗る。同乗したのはわずか4人。しかも中高年は一人もいない。紅葉シーズンなら平日でも満員にもなるバスの便なのだが。

8時半過ぎには東日原バス停に到着する。一緒に降りた青年2人はハイカーではなく、日原の鉱山や集落を見学に行くらしい。なるほど、それも面白い。

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バス停脇のトイレを借り、8時35分登山開始。東日原から少し戻ると登山口がある。地図では中日原方向からも登れるようだが未確認。

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みなみらんぼうさんも登ったんだねえ。ちょうど5年前か。

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登り口からは植林帯の急登で少々きつい。しかし針葉樹林を抜けると、ヨコスズ尾根は大変に心地の良いミズナラなどの落葉樹の道になる。しかもよく踏まれていて、とても歩きやすい。

この道は、宮内敏雄の名著『奥多摩』にも「細久保乗越」として紹介されている歴史のある道だ。おそらく文化的、経済的に結びつきの強かった日原集落と、秩父浦山集落の生活道として使われたものだろう。

要所には道標があり、迷う心配はほとんど無い。凍結時でなければ初心者でも歩きやすい道だと思う。

植林帯との境界線で、カモシカの群れと出会った。おれの姿を見ると軽やかに走り去ってしまったので撮影は出来なかった。

途中、倉沢廃村からの道を探したが見つけられなかった。いよいよ本格的に廃道になってしまったかな…。

葉の落ちたミズナラやブナの林からは石尾根や長沢背稜がよく見える。とても良い気持ちで登ることができた。やはり落葉樹林は良い。

 

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11時15分、一杯水避難小屋に到着。脇のベンチで若い男女ペアが昼食を摂っていたが、今日出会った人は結局それだけだった。

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外の温度計は9.5度を指していた。この時期にしては暖かいのではなかろうか。

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小屋裏から山頂への急坂を行く。15分ほどで一つピークがあり、仙元峠と蕎麦粒山方面への分岐がある。正面には目指す山頂が。

11時50分。小さなつぼみをつけたアカヤシオシロヤシオの群生をかき分けるようにして、山頂へ到着。所要3時間15分なので、コースタイムどおりであった(『奥多摩登山詳細図』による)。

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天候が思わしくなかったので眺望は期待していなかったのだが、山頂からはほぼ360度の素晴らしいパノラマだった。正面が石尾根でやや右の突き出たピークが鷹ノ巣山。その左奥に雪化粧した霊峰富士。まさかこの曇り空で富士山まで見ることが出来るとは……。f:id:x-1:20151210115103j:plain

振り返って秩父方面。三角形の武甲山の奥のほうには上信越赤城山やおそらくは谷川の峰々が見える。上のほうは雪をかぶり始めているようだ。

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手前はこれから降りる仙元尾根、奥武蔵の山々。

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一番左が大岳山。尾根続きに御前山。手前が石尾根六ツ石山。その奥に三頭山。さらに奥は西丹沢の峰だろう。右端に富士山。

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もちろん奥多摩の主峰、雲取も中央左に。大ダワをはさんで右に芋木ノドッケ。

 

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地図上は天目山だが、同名の山が多くあるので、秩父名の三ツドッケのほうが好きだな。

景色を堪能しながら昼食を摂り、12時20分、仙元峠へ向かうため下山開始。

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12時39分、一杯水への分岐に到着。日が短い時期なので今日は一杯水へは寄らず急ぐ。おそらくこの辺りから「細久保乗越道」のグミノ滝、細久保谷へ降りる道があったはずだが……。歴史のある道でも、人が通らなくなればあっという間に消滅してしまう。まあ検索してみると、古道を探索しながら辿っているツワモノも居るようだ。

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13時19分、仙元峠への分岐に到着。ここで長沢背稜から続く天目背稜とはお別れだ。この尾根道もたいへん歩きやすかった。

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10分弱坂を登ると、仙元峠に着く。ここで北西方向を見て驚いた。正面奥、雪をかぶっているのは浅間山ではないか?

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そして振り返って木々の間からは富士山の雄大な姿が見える。

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仙元峠というのは、2つの「浅間」をいながらにして拝むことが出来る峠なのだ。

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解説板にはこうあるが、「秩父多摩を結ぶ唯一の峠」というのはやや誇大だろう。しかし重要なルートであったのは確かだと思う。富士講の人たちはどのような気持ちで富士を見たのだろうか。

なお、宮内敏雄『奥多摩』からの孫引きだが、昭和5年発行のハイキング案内には、この仙元峠は「秋が深まると山犬がうろうろし始めるので注意すべし」と書いてあるそうだ。ここは昭和に入ってからでさえ、明治時代に絶滅したはずの山犬=狼がうろつきそうな気配のする秘境だったのだ。

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仙元尾根から三ツドッケ。

 

 

さて、仙元尾根を下ったのだが、たいへんだった。

こんな場末のブログを見に来る方はあまりいらっしゃらないだろうが、一応後の参考のために書きとめておくことにする。

この仙元尾根、実は2年前に蕎麦粒山に登ったときに下山路として使ったことがあるのだ。だから今回も下山ルートとして使ったのだが、奥多摩側とは比較できないくらい荒れている。はっきり言って初心者の方にはお勧めできない。

その理由としては、まず道標が存在しない。そしてコースが荒れている上に踏み跡がはっきりしない地点が少なからず存在すること。

また踏み跡があるところでも、林業の作業用道やけもの道が縦横に走っていて、本コースが明瞭でないこと。

さらに、コースを示す色テープが林業の作業用目印と区別が付かず、参考になるどころか、まるで遭難へと誘う罠のような状態になっている。この点は林業関係者様にぜひとも配慮をお願いしたい。本当に大変危険である。

俺も2年前の記憶が無ければ遭難していたかもしれない。それくらい危ない道になっていた。

とにかくこのルートを降りるなら、尾根上か、尾根の東斜面を巻くように北に向かって走っていて、それを外すことは無いことを頭に入れておくべきだ。

西斜面を下っていたり、尾根が東向きになっていたりしたら、それは別方向に迷い込んでいる徴なので、地形図とコンパスを使い、慎重に進み、少しでも危ないと思ったら尾根上に戻ることだ。

そして最も参考になるのは、東京電力の高圧送電塔を4つくぐること。一番ふもと側の送電塔が、西の細久保谷を渡るところまで来れば、北に浦山ダムが見え、次第に浦山集落の雰囲気が感じられてくる。

しかし秩父側は、コースの荒れ具合はもとより、鹿の食害でブナの皮が食い荒らされていたり、その影響と思われる倒木で歩きにくかったりで、いろんな意味で本当に危機的な状況のように感じた。

この付近は細久保谷、広河原谷へ続く道が2本廃道になっているので、この仙元尾根まで通行できなくなれば、ますますハイカーにとって縁遠い地域になってしまう。近世以前から続く歴史ある道が荒廃していくのは残念なことだと思う。